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ぴー吉 上野 歩 / イ  第36回『味噌カツ復活』・・・P2

挿絵  味噌カツのことをさいしょに知ったのは、向田邦子のエッセイだった。
「八丁味噌にミリンと砂糖を加え煮立たせたものを、揚げたてのカツにかけただけだが、油のしつこさを味噌が殺して、ご飯ともよく合う。これぞ餡パンに匹敵する日本式大発明、いまに日本中を席巻するぞ」と彼女はほめている。
 この文章を読んで以来、かの地におもむくようなことがあれば、ぜひとも――と思っていた。
 念願かなって口にした味噌カツは、けれど想像していたような味ではなかった。
 僕はトンカツが大好きだけれど、ぶっかけられた味噌ソースが、みょうに甘ったるくて、これじゃあ、せっかくのカツがだいなしだよォ、と思ったものだ。
 そのとき帰りに、駅まで乗ったタクシーの若い運転手さんが、偶然に東京の出身だったので、「名古屋ってどういうところですか?」と、こちらにきてからの印象をきいてみた。
「そうですね、食いもののまずい町ですね」というのが、そのこたえだったのだ。
 そんなこともあって、こういう過剰な味つけは、東京もんのあっちの舌になじまねえんでえ、ときめてかかっていたところがある。

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