老人は、その大根を見て、「ちっ」と舌打ちし、もう1本ひっこぬく。
老人は、持ってきた2本の大根を土のうえにほうるようにおいて、
「ちいせぇから2本やるよ」
とぶっきらぼうに言う。
「ありがとう」
と言って、僕は100円玉を1コわたす。
「葉っぱはいらねえんだろ」
と言って、持ち帰りやすいように、ナタで大根の葉を切り落とそうとするおじさんに向かって、僕のよこにいた家内が、
「いります! いりまーす!」
とあわてて言う。
その葉っぱをつかって、彼女は菜飯をこしらえるつもりなのだ。大根葉を湯がいて、みじん切りにし、やはりみじん切りにしたショウガとともに炊きたてのご飯とあえる。
僕らは、泥のついた大根や白菜をスタンドにあった新聞紙でくるんで、買いもの用のトートバッグに入れる。
ぱんぱん、と手ぶくろをはたきあわせると、大根葉におりていた霜が、冬のあわい陽のなかでガラスの粉のように散る。
