詩人である父は、彼の不倫が原因で、妻に自殺されてからというもの抜けがらのような日々を送っています。
リンゴのなかで唯一親密な存在としてかがりの占めるパートは年を経るごとに大きくなるばかりです。
かがりは、リンゴとのインセストを避けるためかどうか、意識は外の世界へと向かっています。『愛は午後』は、かがりとリンゴを中心に展開する恋愛小説であり、家族小説ということになります。
僕のなかにある恋愛小説のプロセスというのは、ふたりが出会って恋に落ち、結ばれ、やがて別れるという一連の流れにあります。
ところが、このなかにある〈別れる〉というのが、小説上ひじょうに成立させにくい時代にあるように思うのです。