現代では、泣く泣く別れるという事情が見つかりにくい。そんなに愛しあっているのなら、なにも別れることはない。少々まわりを傷つけようが、自分らが傷ついたとしたって、なにをかまうもんですか、いっしょにいたらいいじゃありませんかといった風潮が一般的であるような気がするのです。言ってみれば、書く側として、ひじょうに別れさせにくい。
そこで、さいしょから恋愛できない、別れざるをえない運命にあるカップルとして姉と弟を選択しました。
タイトルの『愛は午後』は、かがりとリンゴの父親が、やはり詩人である妻の死後に編纂した彼女の唯一の詩集『愛は午後』からとりました。
出会いは朝。
恋は真昼。
あなたとわたしが溶けあう愛は午後。
やがて、『愛は午後』の詩人には、わかれの夕暮れと深夜の孤独が訪れます。
この詩のなかに、僕なりに考える恋愛小説のプロセスもこめてみました。