エレベータで地下2階におりて、ハリウッドプラザにある台湾屋台式ぶっかけごはんをテイクアウトする。
円形半地下のメトロハットのベンチに腰を下ろし、眼下のレストラン街で展開されている六本木六丁目食堂の行列を眺めつつボックスミールをぱくつく。ご飯にかかってる豚バラ肉の煮込みもだが、トッピングしたホホ肉がやわらかくて絶品。添え物のメンマや春雨ともやしのナムルもいける。これでもかと味つけゆで玉子が半分乗ってるのには涙がこぼれそうになった。その涙をこらえんと振り仰げば、吹き抜けの向こうで六本木通りにある自動車会社の看板でデイビッド・ベッカムが微笑んでいた。絶えず流れている近未来的BGMとともに、こうしてわさわさした人ごみのなかでぶっかけ飯をかっ食らっていると、『ブレードランナー』のファーストシーンで屋台うどんをすすっていたリック・デッカードのような気分になってくるというものだ。
SFハードボイルド調の雰囲気のうちに腹ごしらえし、環状3号線沿いに歩いて麻布十番を目指す。
9月にはいってからぎらぎらした真夏のような暑さがつづいている。持参してきた水筒のウーロン茶をあおると、東京タワーの向こうに入道雲がもくもくと高く盛り上がっていた。
大江戸線の開通とともに陸の孤島を脱却、追い討ちをかけるような六本木ヒルズのオープンで大ブレイクした麻布十番商店街はひどく戸惑っているように見えた。いまさっき「腹ごしらえし」なんて書いておきながら、ここでの町歩きの目的は買い食いである。
浪花屋の鯛焼きは、入手するのに2時間を要する。そんな貴重品を食べながら歩いてる女の子のふたり連れは追いはぎにでもあいやしないかと傍から見ていて心配になってしまう。
鯛焼きはあきらめて通りをはさんで間近にある月島屋で今川焼きを買う。こちらは行列ができていなくて、つぶ餡の今川焼きがすぐさま買える。
子ども時代、実家の工場(こうば)が忙しいと、祖母の家にあずけられたのだけれど、そんなときはこの今川焼きがおやつだった。もっと皮が薄くて、僕の町ではこれを太鼓焼きとかどんどん焼きと呼んでたけれど。
