まずはビールで喉をうるおす。中瓶のビールはハカマをはいている。
お通しに、辛し味噌がすっとひと刷けされたホタルイカが出る。ホタルイカはボイルしたものだが、ぷりぷりとして大きい。
家の近所で買うホタルイカとのちがいに眼をみはっていると、カウンター上にあった見事な長角皿に板さんがワカメと薄切りにした玉ネギを盛ってくれる。
「箸休めにしてください」とのこと。
店でつかっている器は、すべて魯山人ふうだという。
こんどは、その長角皿に白魚をさっと茹でたのがあらわれる。これを、もみじおろしのポン酢で食べるのだが、なんとも立派な白魚である。
ポン酢にはカボスを用いているとのこと。
冷酒にしてもらって、次々に出てくるつまみの刺身に箸をのばす。
ヒラメのこりこりとした歯ごたえ、マグロの中トロと霜降りが舌にとろける。
自宅でタコのぶつ切りを塩とレモンで食べることはあったけれど、コウイカ(スミイカとも)を塩で食べるのは発見だったし、はじめて食べるアナゴの肝焼きにはうなった。ウナギの肝のような臭みがすこしもないのは、これがアナゴの肝だからではなくて、このお店の肝だからなのだろう。
さて、カツオである。
「初ガツオのわりには脂がありますね」
と言いながら板さんが差し出したのは、表面をかるく焙(あぶ)った土佐づくりだが、刺身のあいだに切れ込みが入っていて、あいだにニンニクとワケギがサンドされている。
