小ぶりなタイの塩焼きがくる。こういうのが、とてもうれしい。タイの身肉を口にはこぶ。なんというか、澄んだ味わいがする。酒を飲み、またタイをほめ、ハジカミをかじる。
マグロのカマの焙りがくる。かすかにニンニクの香りがする。さいしょは、さきほどのカツオの土佐づくりにつかわれていたニンニクの香りが皿に移ったのかと思った。
板さんにそれを言うと、「お、スルドイですね」とにっこり笑った。カマに薄く塗ったしょう油ダレにほんのすこしだけニンニクをまぜているとのこと。
ここの板さんはすこしもエラそうなところがない。教える、という感じでなく、こちらの質問にていねいにこたえてくれる。謙虚なサービス精神を感じる。
いよいよ握りがくる。マグロの霜降りも大トロも、コハダも、この店が考案して広まったという軍艦巻きも、品よく小ぶりなのは、酒のつまみだからとのこと。
アナゴは塩とタレの2通りでいただく。玉子焼きはご飯なしで味わった。
眼のまえにあらわれる握りを指でつまみ口にはこんでいると、どこか噺家とでもいった風貌の、気のいいダンナがカウンターに顔を見せて、とぼけたユーモアをふくんだ語り口で「ぴしっとした適切な価格、清潔感、すべてのお客さんに公平にする、鮨屋が能書きを言わない、これが私の心得です」と言う。
「適切な価格ですか――」
と思わず口にしたら、
「ランチにいらしてください」
というこたえが返ってきた。
しめくくりの手巻きものはネギトロにしてもらう。これも品のよい大きさだ。
ネギトロ巻きにかぶりついていると、ごちょっとした厚切りのたくあんが、まさに絶妙といったタイミングで眼のまえの長角皿に、すっと置かれた。
