買ってきたすね肉は、なるったけ大きくぶつ切りにする。男の料理は豪快なほうがいい。 こんどは切った肉の表面をフライパンで焼きつける。なにしろ大きく切っているから、ひっくり返すのに、うんこらしょと力がいる。手首をおかしくしてしまいそうである。この時、塩、こしょうもしっかりする。こうやって肉の味をなかに閉じ込めるわけだ。
香ばしい焼き色がついたら、肉を鍋に移す。
火にかけたままのフライパンに赤ワインをそそぎ、ヘラで肉の旨味をこそぎとって、これも鍋に入れる。
大きな鍋の、肉のうえ15センチくらいのところまで水を入れ、煮込み開始。
なにしろ、やわらかくするために、時間をかけて弱火でとろとろ煮込むのが、すね肉だ。しかし、これをめんどうと思うか、たのしいと感じるかである。
僕について言うと、肉を煮込むのはたのしい作業だ。しかも、かなりたのしい。
料理をはじめると同時にリビングのDVDに好きな映画をセットしている。それをキッチンからちらちら眺めつつビーフシチューをのんびりとつくる。こんな休日の午後の過ごし方が、なんとも自分に合っているのだ。
ビーフシチューづくりにちょうどいいBGVが『ゴッドファーザー』であることは先月書いた。僕にしてみれば、何度も見ている映画(大好きな映画!)でストーリーはわかっているし、時間のかかる料理にはおあつらえむきに長尺だ。映画のつくりの骨太な印象が、ビーフシチューという料理の重厚なイメージにもうまくシンクロする。
僕は『ゴッドファーザーPARTII』『ゴッドファーザー』『ゴッドファーザーPARTIII』の順番に見ながら、3度ビーフシチューをつくった。
そうして、あらためて気がついたのだけれど、『ゴッドファーザー』のなかにはさまざまな料理が登場する。そのほとんどはイタリアの家庭料理で、しかも男たちがじつによく料理に腕をふるっている。
『ゴッドファーザー』では、コルレオーネ・ファミリーのでっぷりとした幹部クレメンツァ(リチャード・カステラーノ)が、ミートソースをつくりながらドンの息子であるアル・パチーノに向けて問わず語りにレシピを説いている。彼は、このあとに料理を教えるような気軽さでピストルの扱い方も伝授する。
『ゴッドファーザーPRATIII』では、ファミリーに敵対するギャングを抹殺するため、仲間と潜伏したアパートで、若きリーダーであるアンディ・ガルシアが食事の用意をしている。彼がつくっているのはニョッキだ。このあたり、腹がへってはいくさはできぬ――まずはメシだ。しかも、どうせならうまいものを食おうよ、といったイタリア系気質が感じられてユニークだ。
