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ぴー吉 上野 歩 / イ  第95回『晩秋』・・・P3

挿絵 秋の終わり、いまは閉鎖されてしまった博物館動物園駅の建物のまえに立ち、僕はあのピラミッドのような屋根を見上げていた。
 ひさしに垂れ下がっていた石の氷柱はきれいに取り除かれ、入り口が鉄の扉で閉ざされた建物は、なにかのモニュメントのようだった。
 それからゆっくりと上野公園を歩いて国立科学博物館に入った。
 僕はここが好きで、子どもの頃から何度か訪れていた。
 きょうは新館がオープンしたのを機に久し振りにやってきたのだ。
 ステンドグラスが美しい、堅牢で重厚な本館は改修工事中である。
 新館を見てまわり、屋上のハーブガーデンに出た。そこから晩秋の東京を眺める。
 改修中の科学博物館本館のまわりには足場が組まれ、屋上の天文台には作業をするひとが登っている。
 色づいた森のなかから表慶館の壮麗なドームが突き出ている。けれど、森を囲む街並みは高い建物が少なく、建物もまばらである。その建物のまばらさ加減や距離感が、東京だなと思った。
 僕の東京は、まん真んなかの都心を下町のほうから眺める景色の距離感である。僕は東京都内で生まれて育ったけれど、自分の住んでいるところを東京だとは思っていなかった。ごみごみと小さな工場ばかりが建てこんだ町を、なんだか恥ずかしいようにも感じたことがある。
 あのころも勝手にいろいろなことを恥ずかしく感じてばかりいて、ここは長く勤めようと思っていた上野の森にあった事務所も間もなく辞めてしまった。
 茜色に染まった空に遠くニコライ堂の鐘が響き渡った。

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