河原に張り出した川床(かわゆか)のような桟敷に案内される。
まずは、さきほど目撃したアユの塩焼きが出る。焼きたての香ばしい身は骨ごと食べられる。
あまり大きくなると、骨がかたくなり、こうはいかないのだという。「通のひとは、あまり大きくないのを好むんですよ」とご主人が言った。
「蓼酢(たでず)はないんですか?」なんて言ったら、「通じゃないなあ」と言われそうな気がして、おとなしく食べた。
うまかった。
桟敷から簗(やな)が見える。竹で組んだ簾(す)に川の流れを導いて、アユを捕る仕掛けである。
いまは水量がすくなく、簗が河原に剥き出しになり、アユも遡上してしまい魚影は見えない。が、料られて出てくるのは、すべて眼のまえの川で捕れた天然アユである。
つづいてアユのフライが運ばれてきた。
丸のままをパン粉をつけて揚げてある。
レモンだけを絞って、アタマからかぶりついた。エラが歯に引っかかったが、やはり骨ごと食べられる。
水温の低い利根川のアユは身が引き締まっているという。それはわからないが、身はあくまでやわらかい。
締めくくりは、焼いたアユをほぐして混ぜ込んだアユ飯。
汁物は、コイこくならぬアユこくである。筒切りにされたアユの身は、たんと脂があった。
桟敷から見上げた空は、相変わらず曇っていた。けれど、おかげで暑くもなく、川風が心地よかった。
アジサイ日和は、アユ日和でもあった。

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