本作では、2人の記者の取材行動を丹念に追いつづけている。現実の取材活動がそうであるように、それはひどく地道で単調とも思える作業の繰り返しである。
何本も電話をかけるが、たいがいが空振りである。多くのひとに会い、疎んじられ、執拗にメモをとり、社にもどってタイプライターをたたく。ネクタイを緩め、シャツの袖を捲り上げたその姿は、まさに働く男の姿である。そして、これがなんともカッコイイのだ。
そう、『大統領の陰謀』の魅力とは、この働く男の姿を描くことなのである。
作中、2人が国会図書館で貸出カードから事件の関係者の名前を見つけ出そうとする場面がある。
膨大なカードを、2人は1枚1枚ぱらぱらめくっていく。カメラはだんだんと上昇してゆき、円形の閲覧室のなかで、彼らの姿は豆粒のようにちいさくなる。
かくもちいさき者の地道な努力が、ついには国家の最高権力者を失脚させることになるのだという予兆こそが、映画的カタルシスにつながるわけだ。
ちなみに、2人の姿を捉えたカメラが次第に上昇という画は作中多用されている。取材先に向けて走る2人のクルマを追うカメラはやがて空に舞い上がる。クルマは夕闇のワシントンの街深く溶け込んでゆく。
2人の記者だけではない、彼らを見守る上司のジャック・ウォーデンもマーティン・バルサムもカッコイイ。
なかでもひときわしびれるのが主幹役のジェーソン・ロバーツである。いつもかったるそうにしていて、椅子に腰掛けると足をひょいと机の上にのせる。ま、行儀が悪いのだが、このポーズがなんともさまになっている。
レッドフォードとホフマンの原稿に眼をとおすときも、電話を受けるときも、編集会議の席でも、靴を机にのせている。
だから、ロバーツが登場すると彼の靴の裏側を眺めることになる。どれもレザー・ソールで、カラス仕上げが施されている靴もある。
カラスとは、靴底を黒く塗装する高級靴の仕様だ(ちなみに土踏まずの部分だけ黒く着色するのは半カラス)。
これは相当の洒落者なんだろうな、なんて思いながら眺めていると、レッドフォードとホフマンだけが残った深夜のオフィスに、なにかのパーティーの帰りらしいロバーツが大きなボウタイにポケットチーフをたっぷりとのぞかせたスタイルで現れたりするのである。
ロバーツはこの役でアカデミー助演男優賞を受賞。
