列車が新発田(しばた)に停車すると懐かしい思いがした。20代の頃、玩具の業界誌の記者をしていた時に、この町にあるおもちゃ屋さんを訪ねた。個人商店なのだけれど、テレビの特撮ヒーローのショーなど大きなイベントを開催して地元の子どもたちをたのしませていた。僕はそのおもちゃ屋の店主を取材し、大きな記事にした。店主はとても喜んでくれ、一升瓶の越乃寒梅を送ってくれた。
翌年、ふたたびその店主を取材することになった。大店舗法が改正され、海外から大型玩具チェーン店が出店してくることになったのだ。業界内の噂では、その1号店が新潟にオープンするというのがもっぱらだった。そうなれば、ちいさなおもちゃ屋などひとたまりもない。僕はふたたび店主をインタビューすることにした。店主は歓迎してくれ、おいしいとんかつ屋さんで昼飯をご馳走してくれた。取材にも協力してくれ、あちこちのおもちゃ屋さんや問屋さんをクルマで案内してくれた。
東京にもどった僕は、揺れる地元玩具店といった内容の記事を書いた。「これこそルポだ!」と勤めていた会社の社長には大いにほめられたけれど、あの店主から抗議の電話があった。「こんな興味本位の記事を書きやがって! あんたなんかにあれこれ話すんじゃなかったよ!!」
一瞬、苦いものが胸をよぎった。青春の思い出だ。
列車が日本海沿いに出ると、一昨年の夏に旅した佐渡が大きく見渡せた。こちらはたのしいことだけの思い出だ(第126回『佐渡(前編)』、第127回『佐渡(後編)』)。
