三軒め、のし湯の庭につくられた露天風呂は風情があってよかった。脱衣場からしてレトロな雰囲気で趣がある。どこか夏目漱石の原作を映画化した森田芳光監督の『それから』(’85年)の世界を連想させた。もっとも映画のなかでは入浴シーンなどないのだけれど。
師走の日没まえの湯めぐりだったが、外気は冷たいものの、温泉効果で足袋ソックスもはかず、カイロのお世話にもならなかった。
入湯手形は地元産の小国杉(おぐにすぎ)でできていて、裏側に行った旅館の帳場でスタンプを押してもらうようになっている。使用済みの丸い手形が、地蔵堂に絵馬のようにたくさん括り付けられていた。僕はせっかくなので記念に持ち帰り、ウイスキーグラスのコースターにつかうことにした。
最後にこの日の宿、湯彩のライトアップした渓流の滝を臨む露天風呂に浸かったが、ここは大型旅館だけにハリウッド超大作とでもいったダイナミズムに圧倒された。
いや、いろんな露天風呂があるものだ。
夕食の献立はつぎのごとし
| 食前酒 | 梅酒 |
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| 小鉢 | 冬菜柚子浸し、柚釜盛り |
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| 前菜 | 赤紫蘇砧巻き、いぶり豆腐、安納焼芋金団、鳥そぼろパンロール、笹身酒粕漬け、袱紗焼、雪輪紅芯大根 |
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| 吸物 | 湯葉団子、春菊、千切り人参、柚子 |
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| 造り | 優彩造り(※ウエノ注:豆腐に山芋が練り込まれたのとニジマスのミルフィーユふうが氷の器に盛られている) |
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| 名物 | 糸切り馬刺 |
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| 煮物 | 翡翠信田(里芋、筍、こごみ、南京、梅人参) |
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| 鍋物 | 熊本県産黒豚シャブ鍋(白菜、水菜、京葱、胡麻ダレ) |
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| 温物 | 百合根五色蒸し、椎茸、絹さや、鏡蕪、銀あん |
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| サラダ替り | 鮃と海老鳴戸巻(※ウエノ注:豆腐ドレッシング) |
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| 強肴 | 梅蒸し(※ウエノ注:茶わん蒸しの甘い梅) |
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| 止椀 | 山菜汁 |
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| 食事 | 御飯、香の物 |
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| 水菓子 | (※ウエノ注:地元ジャージー牛乳使用)、苺、オレンジ |
きょうは冬至である。そんな日に温泉場で湯めぐりができた。
部屋にもどって、シングルモルトウイスキーを啜りつつ、年賀状を書く。師走の気配が満ちてくる。
書き終えた年賀状は、明日、九州のポストに投函するつもりだ。
(『九州温泉紀行』おわり)
<泊まった宿>
湯渓の響き 優彩
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