よつかどのそばも白っぽい。薬味は、わさびとネギのほかに大根おろしが付いていた。
これまでのように、最初は薬味をつかわずそばの味だけを楽しむ。ちょっと水のキレがよくないかなと懸念しつつ箸でたぐり、すすってみると、フワッと、なんとも知れないそばの風味が口中に広がった。
さて、そこで妻と今後の展開を協議した。ここから歩いてツアーの集合時間に中社(ちゅうしゃ)前のバス駐車場に戻るのは不可能である。
そこでもう1店舗、この近くにあるお店に入って、その後、20分後に最寄りの停留所を発車する路線バスに乗り、中社を目指そうということになった。
よつかどから道を隔てて、ほぼ真向かいにあるたからやへ。暖簾を分けて、入ろうとすると、中から入れ違いに食事を済ませた地元の方らしい男性が出てきた。
店内は入れ込みの座敷のみで、玄関で靴を脱いで上がる。
あまり愛想がいいとは言えない女将さんが、「いらっしゃい」もなしに、半ざるのチケットを持っていった。
店内には客の姿はなく、座敷の隅には週刊誌が積まれ、デジタルテレビでお昼のワイドショーが芸能ネタを伝えている。その雰囲気は町場の中華料理屋の小上がりといったところだ。
女将さんがふたたび姿を現し、山のような野沢菜漬けとおでん(!)を無言で置いていった。
4軒目のそば屋で、妻はそれらにほとんど手をつけなかったが、僕は残すのも悪いような気がして、あめ色に煮込まれた大根や練り物を黙々と口に運んだ。
やがて、半ざるが来た。角の立った、やや太いそばで、アルデンテといった歯応えだった。「短いところもどうぞ」と、そばを切った端の部分も別のざるに出してくれる。愛想はともかく、サービスはこれまでのどこの店よりいい(愛想が悪いのではなく、人見知りなのだろう)。ただし、僕はもうかなりお腹いっぱいで(ご丁寧にも各店でそば湯まで喫してきている)、それらを残さず食べることのみに苦労した。
自分の半ざるだけに集中していた妻は、4軒のなかで、このたからやが、そばの風味がいちばんよかったと感想を述べた。
さて、5枚綴りの「半ざる手形」だが、我ら夫婦は4軒でギブアップ。残ったチケットはお土産やさんで金券として使えるとのことで、活用させていただいた。