レンガ色の2両編成。運転室にドアはない(立ち入り禁止だけど)。運転士の座っている席の横のドアも開け放たれている。
ワンマン運行のため、運転室のすぐ後ろに運賃箱があって、僕はその鉄の囲いに綿パンの尻を乗せ、貫通式車両の最前部の細長い窓から進行方向を見据えていた。
僕が確保した特等席を、あとから母親と一緒に乗り込んできたチビッ子が虎視眈々と狙っている。
だが僕は、終点の氷見までの30分余り、この場所を明け渡さないつもりだ。
氷見線は揺れる。
ぽかぽかと暖かな、よく晴れ渡った北陸の空の下、車齢を重ねたディーゼルはのんびりと走る。
能町は交換駅で、単線を両方向から来る列車の行き違いを行った。
氷見線は揺れながら農地を抜けてゆく。
ローカル線の運転士は孤独だ。ひとり、無人駅に降り立ち、客のいないホームに向けて安全確認し、笛を吹く。
越中国分を過ぎると海が見える。お定まりの撮り鉄らが三脚を立て、富山湾越しの立山連峰を背景に走る氷見線という贅沢な構図を狙っている。青い空の下、山脈がくっきりと見渡せる。今日はきっとよい写真が撮れるだろう。
正面に能登半島が見えてきた。それに向けて、気動車がプオーッと警笛を上げた。
(つづく)