東京駅前の八重洲スター座は、なんとも客層のいい名画座である。近辺にある一流企業の重役らが、暇つぶしに映画を眺めにきている。
ある日の八重洲スター座は、男性整髪料のにおいがただようふだんの館内と趣を異にしていた。異様な風体の若い男女で満員である。
「あんた、ここ空いたわよ」
と、革の超ミニスカートにネットストッキングのお姉さんが、学生服の僕に席をゆずってくれた。彼女は2本立ての片方である『ヤング・フランケンシュタイン』を見ずに帰るらしい。僕はこっちがお目当てで来たのに。
ほかにも、ぞろぞろ外に出てゆく客がいる。
どういうわけだろう? と考えていたけれど、ジーン・ワイルダーやマーティ・フェルドマンの怪演を眺めているうちに忘れてしまった。
そうして、もう1本が始まるころ、館内はふたたび異形の若い男女で満ちてくる。
映画が始まって、度胆を抜かれた。客が総立ちになり、スクリーンのなかで歌い踊るシーンに合わせ高々と上げた手を狂ったように打ち鳴らしはじめたからだ。
ロック・ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』が観客参加型のカルトムービーであることを知ったのは、それからずっとたってから読んだ映画雑誌の記事によってだった。
