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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第155回 僕の映画ベスト10(洋画編)・・・P3

挿絵  僕が高校、大学時代は、家庭用VTRがまだ一般的でなかった。好きな映画は、もっぱら2本立ての名画座に足を運んで観るしかない。ブライアン・デ・パーマ監督(亡くなった映画評論家の今野雄二氏が“デ・パルマ”ではなく、こう表記していたので、僕も“デ・パーマ”とおぼえた)、ジョン・トラボルタ主演のサスペンス『ミッドナイトクロス』('81年)は1週間連続で通いつめたものだ。2本立ての片方は見ずに出てくるのである。
 そうやって入れ込んだ、この『ミッドナイトクロス』は、幾星霜を経て、いまの僕のベスト10には入っていない。デ・パーマ作品なら『アンタッチャブル』('87年)である。
 普通の家庭のお父さんみたいなケヴィン・コスナーのエリオット・ネスもいいけど、これで復活を遂げたショーン・コネリーも、この後『ゴッドファーザーPARTIII』(やはりベスト10に入らず。もっとも'90年製作だけど)に抜擢されるアンディ・ガルシアもいい。アルマーニの衣装もカッコよかった。

 カッコいいといえば、『ジュリア』('77年)で、ハードボイルド・ミステリ作家のダシール・ハメットを演じているジェイソン・ロバーズは、すがれた魅力がある。ふだんはくたびれたセーターに、チノパンの裾を捲り上げた姿で砂浜をぶらぶらしてるのに、同居している劇作家のリリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)が、戯曲が評価され、モスクワの演劇祭に招かれ旅立つ時には、ぱりっとしたスーツ姿で、波止場の隅で中折れ帽を振って見送る。
 前年の『大統領の陰謀』の編集主幹役につづく2年連続のアカデミー助演男優賞受賞のロバーズを見られるだけでベスト10入り。

 '77年の『スター・ウォーズ』(いまでいうところの『エピソード4/新たなる希望』)でスターになったハリソン・フォードの作品では、『ブレードランナー』('82年)が好きだ。ディレクターズ・カット、ファイナル・カットなど、さまざまなバージョンがあるなかで、やはりフォードの自嘲的なナレーションがかぶる最初の日本公開劇場版が馴染み深い。『月いちエッセイ』の第70回「六本木ヒルズと麻布十番」で、僕がオープン間もない六本木ヒルズで、台湾屋台式ぶっかけごはんをかっ込んでいる自分を投影させたのも、ナレーションありの『ブレードランナー』のなかで、屋台でうどんを食うフォードの姿だった。

 さて、ベスト10最後の1本は『炎のランナー』('81年)である。
 映画雑誌で読んだ、故・荻昌弘氏の名調子の紹介記事に誘われてロードショーに足を運んだ。
 ふたりのオリンピック・ランナーをとおして、威厳、頑固、伝統、エゴイズム、よくも悪くも英国そのものを描き込んだ作品である。
 製作者のドディ・アルファイドは、エジプトの富豪の息子。父親はイギリスのハロッズ百貨店を所有する。ドディはこの映画をつくり、交際していたダイアナ妃とともに事故死した。どこまでも英国人そのものになろうとした彼の姿に、『華麗なるギャツビー』に通じる男の野望とロマンを感じ、遥かな気持ちになる。

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