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ぴー吉 上野 歩 / イ 
第166回『KABA BUSに乗る』・・・P3

 裾野の茶色い自衛隊の演習場は見渡せるが、しかし、その上の富士山は白い霧に輪郭を隠されてしまっている。
 実家の階段室に、昔、山中湖に家族旅行した際に父が買った逆さ富士のモノクロームの写真が額装して飾られている。その隣にある額は、僕が小学校時代に虫歯予防のポスターを書いて、都のコンクールで銀賞を得た賞状だ。
 そのポスターは、実は、油絵が趣味の叔父が書き起こした、大きな臼歯の横にいるツルハシを持った虫歯菌の化身をつまみ出すというデッサンを、僕が水彩画にしたものだ。叔父が自画自賛していた、「ドラマチックな構図」による銀賞であったと今でも思う。
 そうして、全校朝礼で、校長先生から賞状を渡されるという栄誉を僕に与えてくれた叔父も、今はこの世にない。
 人生は短い。機会があれば、KABA BUSにも800系つばめにも乗っておくべきである。
 KABA BUSのビニールの窓を巻き上げると、湖面を渡る冷たい早春の風が心地よかった。

挿絵  河口湖畔に建つ、「やまぼうし」というお店でお昼を食べる。
 地元の主婦の方々の手による、素朴な家庭料理のこじんまりしたレストランだ。
 打ちっ放しコンクリートの、水平連続窓とピロティを備えたこの建物は、ル・コルビュジエの「小さな家」のようである。
 おすすめの松花堂弁当(1365エン)は、弁当といいながら、出来立てで温かい。
 山菜天ぷら、さつま芋の入ったしんじょ、ゆば巻き、切り干し大根、ほうれん草ゴマ和え、茶碗蒸し、鱈のフライに添えられているトマトソースもしょっぱくないし、いずれも優しい味わいだ。
 デザートのアップルパイを食べていたら、とうとう富士の山頂部分が霧を分けて現れた。

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