*月*日
この日から毎日新聞社の文化センターで「創作文章教室」をスタートさせる。
終了後、出版社の方と待ち合わせて、お昼ご飯をご馳走になりながら次の本の打ち合わせをする。
4月だというのに、昼になっても気温が上がらず、雨にみぞれが混じる日だった。
帰宅して夕食は鶏すきにする。笹がきにしたゴボウと、ぶつ切りの長ネギをたっぷり食べる鶏肉のすき焼きだ。熱いところを、溶いた生卵につけて食べる。
*月*日
近所にある市場の朝市をのぞきに行く。
魚屋でシシャモ、シャケ、タラコを、漬物屋ではザーサイを味見して買う。
そのあと乾物屋で、妻がカツオの削り節を求めると、「花にする? 厚削りにする?」とオジサンに訊かれる。花とは、薄く削る花削りのことで、さっと煮だして味噌汁のだしなどにする。厚削りは、濃いだしが出て蕎麦つゆなどに向いている。
「花にして」と妻が言い、オジサンは若採りの昆布を「オマケだよ」とくれる。妻はオジサンと顔見知りなのだ。
帰宅して、朝食。市場で買ってきたシシャモを焼く。花削りでとっただしの味噌汁を飲むと、即席だしの味噌汁では物足りなくなる。味噌も自家製だ。それとキュウリの糠漬け。炊き立てのご飯は雑穀入りの玄米。
終日机に向かい、次の本の原稿の手直しにかかる。
夕餉は焼き空豆、フキの煮もの、そして竹の子ご飯である。竹の子ご飯には山椒の木の芽を飾っている。新竹の子と木の芽が合わさると不思議と松茸の香りがする。春の代表が秋の代表の香りと似ているのは不思議なことだ。
乾物屋のオジサンにオマケしてもらった昆布は竹の子と煮て、若竹煮ふうになって食卓に上った。