波除神社(なみよけじんじゃ)まで引き返してくると、なんだが、ほっとした。
境内には水産物や食品の霊を祀る塚がある。〔玉子塚〕の石塚は玉子の形をしている。〔すし塚〕は握りずしの形をしてはいないけれど。
さて、ここからは築地場外で、食べ歩きをしようと思う。
場外も小さなお店がごみごみと立ち並んで、横浜中華街の市場通りとアメ横を合わせたような雰囲気である。
煮干しやドライフルーツの試食をしたり、茂助だんごという場内にもあったお店で、団子をひと串だけ求めて食べる。うっすらとおしょうゆ味のするシンプルな団子である。
そのあとで、今度は飲茶の菅商店さんでプチ肉まんをつまむ。
ほんとはカップ酒を持ってきていて、ちびちび飲(や)りながら、ゆらゆら歩いては買い食いしようと思っていたのだ。けれど、傘を持っているのと人の多さでそんなわけにはいかなかった。
鳥藤さんでチーズカツを買って店先で食べ、丸武さんで甘い玉子焼きを頬張る。
歩いてみて感じたのは、場内も場外も、どこもかしこも食材や物や机や椅子でみっしりと空間が埋まっていることだ。そして、銀座から歩いて数分のところに、想像もつかない混沌が広がっていることだった。ここならば、森田誠吾が『魚河岸ものがたり』で描いたような秘密を抱えた青年の身の置きどころもあったことだろう。
最後にさのきやさんでたい焼きならぬ、小倉あんの入ったまぐろ焼きを買い、ぱくつきながら伊東忠太設計の本願寺とアントニン・レーモンドらの手による聖路加国際病院旧病院棟の建築見学のオプショナルツアーへと向かうことにする。
豊洲市場への引っ越しの際には、ターレは人海戦術で移動するようで、その際には道路に長い列ができるのでは、と今からワクワクしているのだ。
本編で築地市場を訪れたのは今年(2016年)3月のこと。その際には、いわゆる豊洲の盛り土問題も発覚しておらず、屈託なく築地市場を楽しめたのでした。
