ふじた:本作の主人公は実話を背景にしているだけに、これまでの上野さんの作品に登場する主人公らしくないところも新鮮でした。共感できるけど、共感したくはないっていう。なーんかフラフラしててダメなヤツだなあ、っていうところは共感するんですよ、私もそうだし。でも、加えて太宰は才能があって、モテモテのボンボンで、ちょっと威張ってて。まー、腹も立つわけです。こんなヤツに共感したくないな、と。
上野:ははは。僕が書く、いつもの主人公って、どんな感じでしょう?
ふじた:ダメな部分があるのは同じなんですよ。でも、そこから努力ではい上がってゆく。謙虚でもある。なんせ貧乏だったりする。ガンバレ! と応援したくなる主人公なんです。太宰は応援したくないもの。まあ私の場合、モテてる時点で、すでにまったく共感できないですけども。
上野:太宰という主人公については、僕も客観的な見方をしていたと思いますね。なぜ、彼はこういう行動をとったのか? それを常に推理していました。たとえば、婚約者がいるのに、なぜ、カフェの女性と心中しようとしたのか、まったく理解に苦しむ行動です。それを推理して物語を構築していった。いってみれば、太宰治の青春時代を僕が探偵したのが本作なんです。
ふじた:上野さん自身の推理による探偵小説ということですね。『探偵太宰治』は、ぜひ多くの方に読んでいただきたいですね。太宰ファンなら2倍楽しめると思います。
『探偵太宰治』(後編) おわり
