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ぴー吉 上野 歩 / イ  第55回『ヒョウヘンする人々』・・・P3

挿絵  酒乱というのは、やはりふだんおとなしいひとが多いようである。
 むかし勤めてた会社の後輩がそうだった。
 僕がいっしょのときは、たまたま荒れたところを見せたことはなかったが、「あいつにはあまり飲ませないほうがいいですよ」と、よく耳にした。
 あるとき、彼とふたりで飲んで、店を出た。だいぶ飲んで、彼は口数がすくなくなっていた。
 ひと気のない暗い道を渋谷駅に向かって歩きながら、ふと横顔を見ると、彼の眼がすわっていた。
 あぶないな、と思い、かまわないようにしながら黙って歩きつづけた。
 すると、隣を黙々と歩く彼は、工事現場につらなる赤い三角帽子のようなパイロンを、下げていた鞄で、ぽーん、ぽーん、とひとつずつ倒していく。
 僕は、そのようすを眼のはしにとらえつつ、駅へと向かう足どりをじょじょに早めたのであった。
 まったく、飲んでも飲まなくてもいいヤツといったら僕くらいなものである。

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