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_ふじたかつゆきの
_バリ島・ロンボク島

第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話
第7話 4日目の夜から6日目


 それは珊瑚なんだろうか、ともかく高さにして3mくらいのじゃがいもの親分みたいなやつ。
おいおい、いくらなんでもこれがクリスマスツリーか? と心の中でつぶやいていると、ブッディ君はニコリとザブンともぐっていった。見ると、水中でなにやらそのじゃがいもにむかって手をパタパタさせている。
さらによくよく見ると、カラフルな5cmほどの小さなイソギンチャクのようなものが、イモの表面あちこちにくっついて動いているではないか。ブッディ君の手に反応して花がつぼみにもどるような動きをする。潜ろうかと思ったが、自分の泳力を思い出し、あきらめてフィンの先でパタパタやってみる。ああ、閉じた、愉快愉快。
 このイソギン的生物がクリスマスツリーなのか、あるいはやっぱりイモを含めてクリスマスツリーなのかは定かではないが、ともかく海にはまだまだ不思議な生き物がわんさかいるのだ。

 最後に案内された魚1000匹ポイントも、広告にいつわりなし、ジャロもびっくりまっこと竜宮城気分ですばらしかった。珊瑚はやっぱりあらかた白化しているのだけれど、ともかく魚影がこいし、透明度もなかなかで愉快愉快。
 このへんまでくると、鼻から入った海水が脳にまで達したようで、痛みもスッカリ麻痺して余裕である。
 唯一残念だったのはカメが見られなかった事。いや、いなかったのではなく視力が悪いので、みんなが見えているのに気付かなかったらしいのだ。今度は是非ともド付の水中メガネをもってこねばなるまい。

 船に上がる反動で、脳まで浸透し粘性をかねそなえて鼻から大量に噴水した海水を見た船頭さんは「ヒッ」といって目をそむけたが、いいのだ、もうこの人にも会う事はない。シュノーケルはひとまず大成功なのだ。

 島の生活はすばらしかった。語れば長くなるので割愛するけれど、人も純朴で親切だし食べ物もうまい。なんつったって生ジュースが目がとびでるほどウマイ。(ホント、半端じゃなくウマイんだから! )マンゴーにスイカ、ココナツといった100パーセントフレッシュジュースが100円くらいなんだから、日本で飲む缶ジュースがいかにさびしい(なんていうと怒られそうだけど)ものなのか実感せずにはいられないってものだ。
 夜レストランに行くと、昼間若者がとってきたばかりのトレトレピチピチのロブスターなんかを1000円くらいで調理してくれる。海辺に並べられたテーブルには、うすぐらいライトがついていて、ムードも満点。味付けが毎度サンバルなのが飽きるけれど、チープにとんでもなくゴージャス気分を味わえる事にかわりはない。ありがたやありがたや。ギリメノバンザイ。
 しかし、なぜか白人さんのテーブルにはミネラルウォーターにちょっとした料理しか並んでいない事が多かった。我々のところにロブスターやらなんやら痛風になりそうな料理が運ばれてきた日にゃ、目をまんまるくして驚いていたっけ。えげつない日本人でごめん。でも母国じゃ質素な食生活なんだからゆるしてね。
 また、浜辺にはレストランの他に特に店はないが、1度バティック売りがあらわれた事があった。
 バティックというのは染め物で腰にまいたりして使う1枚布。模様モノと素朴な単色モノなんかがあって、ロンボク島では盛んに作られているようだ。
 コテージ併設のレストランで従業員の若者に適正価格をきいてから品定めをしにいってみた。
 バティック売りはパンチパーマでニカっと笑う小柄で筋肉質なおじさんで、本当なのか、名を「アリババ」と名乗った。アリババは日本人のおとくいさんがいて、毎回数十枚買っていくという話しをしながら、これはどうだ、あれがいいぞとせまってくる。恒例のふっかけ金額だが、今回は適正価格を調査済なので強気で勉強させると半べそになっていた。それでもそれなら2枚買えと商人魂をみせてきたので、あっぱれなその心意気に免じて契約成立とし、魚柄のバテッィクを2枚お買い上げ。

* * *

 さて、のんびりだらだらとしているうちに移動日となった。次はバリ島に戻って芸術の村、ウブドに行くのだ。まずは乗り合いの船にのってロンボクまで行く。チケットは、浜のチケット屋で買ったのだが、その値段を宿の御主人に言うと「ベリーエクスペンシブ」でまたぼったくられたようだ。もしこれを読んでギリメノにいかれる方がいたら、船も飛行機もひとまず宿のご主人に相談してみたほうがいい。きっとまともな値段で交渉してくれるだろう。
 ぼったくられてばかりの我々をあわれに思ったか、ご主人はロンボク島を案内してくれるという。わざわざロンボク島の友だちに車を出させてだ。なんとまあ御親切な。
 乗り合い船の前では昨日のボッタクリチケット屋がニヤニヤしながら客を誘導していた。まあ旅行者価格といえば許せる程度のぼられ額だったのでちらりにらんで乗船する。
 船にはこれでもかというくらい人が乗り、おまけに貴重品である水を持ち帰るための空のポリタンクがつめるだけつめこまれた。

 ロンボクの浜では到着をまちかまえる男達がいた。皆デカイにもつをもって船をおりる。私のバックパックもまけないくらいでかいのでふらふらとしながら移動していると男の1人が手伝ってやるから荷物をかせ、と手をのばしてきた。反射的に荷物を渡して1秒後にまずいと感じふりかえると、後ろからきていたホテルのご主人とおちいさんがいかにも「なんでわたすかな、このオトボケめ」という顔でこちらをみている。
 船をおりると荷物はもちさられていたという事はなかったが、男は「持ってやったんだから金よこせ」ともんのすごい形相でこちらに迫ってきた。そりゃまチップって事だから、あたりまえか。が、サービス内容にしちゃ随分とエクスペンシブなチップをしぶしぶ払う事になった。渡る世間に鬼ばかり。トホホ。
 気をとりなおして、我々をまっていてくれたホテルご主人の友だちの車にのりこむ。思えば昼間のロンボクは始めてなのだ。そこはバリとはテイストの違う素朴な熱帯の風景がひろがっていた。
 来る時真っ暗だった山道は、どうやら猿が多く出没する事で有名なようで、車をとめてちょっとだけ猿見物。なるほど猿がよってきた。
 ホテルのご主人がせっかくだから写真をとったらどうだ、とシャッターをおしてくれたが、あとあと現像されてきたものをみると猿におびえて腰がひけている、目つきのおかしな2人組が写っていてかなり笑えた。
 次に我々が両替えをしたいと申し出ると、信頼できるという両替屋につれていってくれた。
 そこまでくると結構な町で立派な建物なんかもある。でも車の前に飛び出してベロベロバーなんておどけてくるおじさんがいたりして、それはバカにしているというより、「よっ元気?」というような、なんだかフレンドリーな感じだった。日本を出る前、あれこれロンボクの悪い話をきいていて神経質になっていたが、むしろバリ島の観光客とみればなんとかぼったくろうという雰囲気がなくて居心地がいいとさえ思えた。それとも、これもホテルご主人が同行してくれているからなのか。
 そしてこれまたいかにも信頼できそうな旅行代理店につれていってもらいバリ島までの飛行機を予約する。対応してくれた男の人は、30代くらいのパリっとした格好をした、いかにもできる感じの人であった。スマートな笑顔に白い歯がアパガードよろしく輝いて好印象だ。横にいる女性社員がお客の前だっちゅうのになにやら食べていたのは、ここではたいした問題ではないのだろう。なんの悪びれた感じもない。

 次の目的地に移動する車中、旬なのかホテルのご主人は盛んに「スイカはどうだ、買っていかないか?」と聞いてきた。そんな重いものもって移動できるわきゃないのでやんわりとことわると、「ホントに買わないのか?」と念をおしてくる。そんなにうまかったんだろうか。あれはナゾだったなあ。

 到着したのはギリメノの商人アリババから買った事もあるバティックの大きな染め物工場だった。
 工場といったってほとんど手作業、みれば子供のように若い職人さんたちが熱心に働いている。
 すると広報部課長といった雰囲気の小柄で痩せ形のおじさんがでてきて、その行程をいっしょに歩いて説明してくれるという。しかも何と英語日本語ペラペーラだ。ほほーこりゃすごいぞ。ホテルのご主人は休憩所でまっていてくれるというので、お言葉にあまえて見学としゃれこむ事にする。

 バリ島ロンボク旅行も日程の半分がすぎようとしていた。


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