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挿絵
2010 上野亭店主口上 BACK NUMBER

>2010.12

挿絵

北海道も九州も日帰り仕事はあたりまえ。出かけた先ではラーメンを食べます。札幌ラーメン、富山ブラックラーメン、尾道ラーメン、熊本ラーメン、博多ラーメン、鹿児島ラーメン……あちこちで食べましたよ、ええ。
でも、たまにはゆっくりと温泉に浸かりたい。
そこで、いちどは行ってみたいと思っておりました憧れの温泉地、九州は由布院、黒川温泉へと出かけることにいたしました。1年の垢を落としてくるつもりでございます。
旅の顛末は、また当ホームページの『月いちエッセイ』でたっぷりとご紹介する所存でおります。

>2010.11

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休日の朝、すこし遅く起きて、整体院に行き、からだをほぐしてもらいます。
その後、靴磨きを済ませ、風呂掃除のついでにシャワーを浴び、気に入りのシャツに着替えて、ふらりと外出。お昼を食べに近所の小料理屋の暖簾をくぐります。
カウンターに座り、ビールを頼むと、なにも言わなくても僕の好みの銘柄がすっと置かれ、「寒くなりましたね」と板さんに声をかけられます。でも、店内は適度に空調がきいているし、僕はひと仕事終えたばかりなので、冷たいビールが心地よく喉を転げ落ちます。
お鮨を一人前頼むと、そこに赤貝のヒモの握りがさりげなく入っていました。
若い頃は自分の馴染みの店が欲しくて、ずいぶんと背伸びをしたものですが、いつの間にかできるんですね、そういうお店が。これが齢を重ねるということでしょうか。

>2010.10

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盛岡で冷麺を食べました。
ええ、そりゃそう東京で食べられますよ、冷麺だって、札幌ラーメンだって、広島お好み焼きだって。でも、東京にいたらわざわざ食べに行かないでしょ、冷麺なんて。
東京は“スーパー残暑”といわれたこの秋最後の猛暑日。それを逃れるようにやってきた北の町はどしゃ降りでした。
辛いのが好きなわりには大汗かきな僕は、小皿にもらった辛みのキムチ(盛岡冷麺でいうところの“別辛”)を、おっかなびっくり足しつつ、とことんつめたい冷麺を啜ったのでした。
韓国冷麺とはちがって金属製でない丼には、甘い甘い梨が浮いていました。 それが今秋さいしょに食べた梨になりました。

>2010.9

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広島から東京に帰るジェットで、僕は機内サービスのオーディオ番組を聴いていました。8月の黄昏、空は晴れ渡っていて、眼下の風景がよく見えます。
テレサ・テンの『空港』が流れる頃、機は駿河湾上にさしかかりました。東宝の特撮セットのように、地形をはっきりと確認することができます。
やがて富士山のシルエットの夕景を望みつつ伊豆半島を越え、大島上空を通過し、相模湾に達した頃、曲は中島みゆきの『わかれうた』に。
そして、夕闇の房総半島上で機が羽田に向かって旋回すると、これ以上ないくらいの絶妙のタイミングで谷村新司『昴』の男性コーラスとともに眼下に宝石のような東京湾の夜景が広がりました。
真夏の宵のフライトはエンタメです。

>2010.8

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真夏日、京都駅から、クリーム地に赤を巻いたレトロなデザインの、いわゆる特急色の山陰線優等列車に乗りました。途中、太秦(うずまさ)の映画村や、山越えの際にはトンネルとトンネルのあいだで渓流を下る観光船なども垣間見て、亀岡という盆地にある駅で下車。
いやー、暑かったですね。時分どきで、ランチビールの1杯もあおりたい気分でしたよ。
ところが仕事できているので、そうもいきません。そこで、己(おのれ)の欲求を抑えるために、駅前で暖簾が眼に入った食事処に飛び込むと、ビールの肴にふさわしくない生臭ものを頼みました。サバ寿司です。
店内のエアコンもあまりきいていなくて、これでビールなんて飲んだら、汗だくだと思い、そちらのほうを欲しがる気持ちはひとまず封じ込めました。
唐揚げとか、天ぷらの定食も出す、夜には飲み屋さんになるようなざっかけないお店なのですが、ここのサバ寿司が意外にうまくて、こんどは冷酒がほしくなっちゃったんですけどね。

>2010.7

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仕事で出かけた静岡で、地元の方(仮にKさんとしておきましょう)に駿河丼というのをご馳走になりました。
お昼に蕎麦屋さんに案内してもらい、「嫌いなものは?」ときかれて首を振ると、Kさんは、おろし蕎麦と桜エビのかき揚げを注文しました。
Kさんは、かき揚げをおろし蕎麦にのせて食べています。
僕は旬の桜エビのかき揚げの、かりっ、ぷちっとした歯ざわりをたのしみたくて、最初はかき揚げのみを単独で食べ、あとからKさんにならって蕎麦にのせました。なるほど、かき揚げの風味が蕎麦つゆでさらに際立つ感じです。やがて、くたっとしてきたかき揚げの衣と桜エビと大根おろしが混在して、これも絶妙です。
Kさんがいつの間に頼んだのか、眼の前にミニ丼が置かれました。それが駿河丼。マグロをしょう油、砂糖で煮たしぐれ煮を散らしたご飯の上に、生のしらすと桜エビ、錦糸玉子を盛り、ワサビで食べます。駿河湾の幸を堪能できるご当地丼でした。

>2010.6

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今月から《上野亭》の半ノラ居候(いそうろう)猫・ちーのページを新たにスタートさせます。題して『ほんねこアルバム』。
毎月《上野亭かきあげ丼》のどこかのページにございます『ほんのねこだまし』の入り口。ココを抜けていただきますと、ちーの眼が見たちょっとちがう日常世界が広がっております。『ほんねこアルバム』は、みなさまのご要望にお応えしての、というより上野亭店員間でもういちど見たいという話がまとまりましてのバックナンバー公開でございます。各店員のコメントも添えてみました。おたのしみいただければ幸いです。
トップページ「お品書き」の「ちー」のコーナーにある『ほんねこアルバム』よりお進みください。

>2010.5

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日本人の朝ご飯の定番ともいうべき納豆ですが、個人の嗜好と地域の習俗(エレベータの立ち位置が東京は左で大阪が右とか)によって、さまざまな食べ方がなされているようです。
ちなみに僕の納豆の食べ方をご紹介したいと思います。まず、納豆の種類ですが、大粒が好みですね。
スーパーなどで売ってるのは、1食分ごとに発泡スチロールの容器に包装されておりますが、フタを開けると、納豆の表面は透明のフィルムにおおわれています。これをはずすのにコツがあるんですね。べろんとはがせば、どうしても糸を引きます。これを避けるために、フィルムを発泡容器のフタにそうようにしてずるずると上にスライドさせるのです。そうやって、そのまま開いたフタにフィルムをくっ付けてしまいます。
あとは容器内の凸凹を利用しつつ、時計まわりに50回、反時計まわりに50回かきまわします。じゅうぶんに粘りが出たところで、付属のタレと辛子を加え、お好みでネギやカツブシをトッピングしてさらに軽くステア。
お箸で炊き立てご飯の中央に穴をあけ、そこに納豆を流し込みます。
ご飯と納豆は混ぜ合わせません。食べ進むにしたがって、双方がだんだんと馴染んでいく感じが好きなんです。

>2010.4

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東京都国分寺市で開催した全5回のエッセイ講座が終了しました。
毎週火曜日の午後、JR中央線の国立駅前から路線バスに20分ほど揺られて会場の公民館まで向かいます。その車窓から眺める武蔵野の風景がのどかで心なごみました。
春まだ浅い季節で、暖かい日があったかと思うと雪の日もありました。車窓から見えた梅の花も盛りが過ぎ、桜の枝がうっすらとピンクに色づいてきた頃、最終日は20度を越えるぽかぽか陽気になりました。
僕は、すっかり顔なじみになった参加者の方々との別れにいちまつの寂しさを感じつつ、拍手で送り出されて会場を後にしました。隣にある中学校の脇の小道を歩いていると、下校する生徒さんから、「さようなら」と声をかけられました。きっと学校の来客だと思ったのでしょう。「さようなら」と僕も挨拶しました。

>2010.3

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自分で磨き込んだチェスナットの内羽ホールカット。その靴先のワックスののり具合があまりに絶妙で、地下鉄の吊革にぶらさがりながらうっとりと眺めていました。こんなのをマニアというのでしょうか。
マニア。
ちょっとやばい響きがあります。
仕事で九州に行った時でした、移動中のタクシーの車内でもマニア心はうずきます。「あ、運転手さん、ちょっとまわり道になるんですけど……」と伝えたその先には、中世の古城を思わせる旧鹿児島刑務所の石造りの門が、市のスポーツ施設の一角に保存されているのでした。こういうのを見たいのってどうよ? 

>2010.2

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電車を降り、小腹が空いていたので駅前のマクドナルドに入りました。注文したのはビッグマックセット。恥ずかしながら、ビッグマックを食するのは、4度めの年男(生まれた年のぶんも数に入れるのかは不明ですが)を迎えた、これがはじめてのこと。蕎麦屋やとんかつ屋には自然に足が向いても、マックは選択肢の上位にはありませんでした。
しかし、ビッグマックを食べるには若さが必要ですね。顎関節症になって口が開かなかったら食らいつけません。それに、やっぱりこういうのはわしわしと勢いよく食べないと。ぼそぼそ食べてると、バンズのあいだからレタスや玉ネギなんかがこぼれ落ちてしまいますもの。
そんなことをフライポテトを口に運びつつ思う、遠出からもどった春まだ浅い午後でした。

>2010.1

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セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ--7種の野菜を刻んだ七草粥を1月7日の朝に食べ、無病を祈るのが七草の習慣です。この時期、朝粥を食べるというのは、じつに理にかなっているような気がします。
お正月は朝からお酒を飲んでいました。いいえ、去年の年末からずっと飲みつづけでした。そろそろ胃がくたびれています。
昨夜は寄せ鍋にしました。刻んだ軟骨を練りこんだ鶏肉の団子、豚肉の薄切り、豆腐、結び白滝のほか、くし切りにした大根、長ネギ、白菜を入れて煮込み、ポン酢で食べます。野菜がたっぷりとれて、カロリーが少なく、胃にもやさしいのです。さて、7日の朝は鍋のだし汁にご飯を入れてお粥にします。七草とまではいかないまでも、大根(スズシロ)の葉を入れることにしました。
よい新年でありますように。

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