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_ふじたかつゆきの
_バリ島・ロンボク島

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第10話 8日目


 夜中にのどが乾いて、部屋にあったメニューの料金表に少し多いお金を持って、フロントにミネラルウォーターを買いにいった。
 すると、なんと従業員が全員床やソファーにごろごろ雑魚寝してるではないか。泥棒入り放題だ。第一見た目だらしなさすぎる。中学生の時、友だちの家の倉庫で宴会をして、そのまま酔っぱらって床で寝込んでしまった時のありさまを思い出す。(その時は帰宅した友だちの母親がびっくりして通報してしまった)
 それでも例の藤井隆似の若だんなを低姿勢でおこして水を売ってくれと頼むと、目をこすりながらもホテルのメニューより断然高額な金額を言ってくる。
まさかここでもぼったくってくるとは思っていなかったので、うっかり
「これしか持っていない」
とお金をみせてしまうと、
「ソレデイイヤ」
と言ってすばやくお札をひったくっていきやがった。もはやぼったくられたのか負けてくれたのかわからない。

 翌朝、欧米系にはヘコヘコするホテルのレストランでサッサと朝食をすませ、散策にくりだした。
 おちいさんがエステサロンにすばやも予約を入れたというのでノコノコついていくと、英国調でこちょばゆいほど綺麗な店にたどりついた。ステキな癒し系音楽だって流れている。
 スタッフに入口の白い円テーブルで説明を受ける。いくつかコースがあるのだが、今すぐにできるコースが限られてるとの事。めんどくさいだけじゃないのか? とちょっと疑うが、まあよし。
 バリでのエステは基本的に全裸だ。というか、日本でもそうなのかな? エステなんて海の男(カニ座だから)の私としては初体験だし、よくわからない。
 マッサージルームに入るとほんのりと良い香がただよってくる。すでに数人のスタッフが静かな笑みをうかべながらまちかまえていて、全体的になにやら神聖なムードだ。マット付会議用長机のようなものが2つ並んでいて、うつ伏せに寝かされる。顔の部分に穴があいていて呼吸が楽にできるようになっている。視界となる床には花の浮かんだ皿が気をきかせて置かれているのがニクイ演出だ。もちろん他の客と相部屋のような事はないし、同性のスタッフが対応してくれる。カップルで行くと同じ部屋になるわけなのだが、一応それぞれのスタッフは背中をあわせるような立ち位置にしていて、隣をのぞいたりしませんよ、という事らしい。
 まず、6種類程度のマッサージオイルから好きな香を選ばせられる。
 次に、枕元の男が仏壇の前にあるようなカネをチーンと鳴り響かせると、それを合図にペタペタといった軽い調子のマッサージが始まった。できればもっと腰をいれてググっと押してくれるとうれしいのだが、そういうタイプの場所ではないのだ。
 そうこうしているうちに終了のカネがチーンと鳴った。なんだかものたりない感じだ。
 スタッフはそこで去っていき、あとは勝手にシャワーをあびて服を着る。
 実はマッサージルームにお風呂があって入っていいのかわからず気になっていたのだが、結局遠慮してしまった。おちいさんはいつのまにかちゃっかり入ったらしい。非常に不愉快だ。

 サッパリとしたところで今度は庶民的なスーパーに入ってみた。
 ぼったくられる事も、値段交渉も必要ないので本当に楽だ。ちょっとしたお土産だったらこっちで買った方が断然かしこい。あれもこれも非常に安くてつい沢山買ってしまいそうになる。ここではサンリオの有名キャラクターモドキの絵がついたお菓子やお香なんかを買った。
 やっぱりモノの価値感についてはカルチャーショックを受ける。
 日本だと観光客向けの店ではついている値段がかなり高くとも、観光地だからしょうがない、という事になってしまう。また遠慮が美徳の日本人としては、「まけてくれ」なんてなかなか言えなかったりもする。
 それがここでは、本当に良いものなのか、その品に対しての適正金額はいくらなのか、などを瞬時に判断し交渉する事があたりまえとなっている。大変つかれる事だが、買う側の価値観が尊重されるわけで、実はこっちのほうが正しい気がする。そのためには、こちらも失礼な金額を提示しないように、まずスーパーで相場を勉強したほうがいいのかもしれない。
 1度着替えのシャツを買ったときの事、店のおばちゃんは500円といったのだが、
「200円! 200円! 200円! 200円! 200円! 200円! 」
と我ながらものすごい剣幕でまくしたてたら、なきそうな顔になってまけてくれた。
 値切る事に疲れていて、つい荒い口調になってしまったのだが、あれはきっとモウケはほとんどないんじゃないかと思う。
 おばちゃんごめん。

 さて今夜の宿はピタ・マハというちょっと高級なホテルだ。エステ同様高級ホテルなんていうのも泊まった事がないのでかなり楽しみである。
 プリサラスワティのボロいバンで送ってもらう。来た時にお祭りの事を教えてくれた姉さんがお別れに記念品の扇子をプレゼントしてくれた。ホントにこの姉さんがいてすくわれる。給料上げてやってほしい。

 ピタマハはさらに山の方に入った静かな場所にあって、傍らには川が流れていた。
 建物はピッカピカ、スタッフも白いフワリとした衣装を身にまとい、これぞアジアの高級ホテルマンといった物腰だ。なにか神殿にでも来たような気分になる。
 スルリとウェルカムドリンクが差し出されフカフカのソファーで一息つく。
 ここが神殿ならわしらは神...。むう。
 ホテルの責任者らしい、いかにも頼れそうな男が、こちらに挨拶をしながら目でするどく合図をすると、貴乃花のようなムッチリ系の若い男性スタッフが風のようにあらわれた。部屋に案内してくれるようだ。くるしゅうない。
 1歩奥に入った所に宿泊者共用のプールが見えてくる。塀がなくて、まるで川に流れ込む滝のようにも見えるつくりは、思わずホホウなどと声をあげてしまう。
 緑が豊かで気持ちがよい。ところどころにおどけたカエルの石像がおかれていて疲れた旅人を和ませる。客室は全室離れになっていて、それぞれに門までついていた。
 部屋にはいると天井の高さとキングサイズのベッドにまず驚いた。スタッフの貴乃花が自慢げにクスリと笑みを浮かべ、次々にステレオやらなんやら充実の設備を、ジャジャーンといった感じで説明していく。風呂は露天風呂だし、小さな庭まである。
 最後にテーブルの上になにやら布で覆い隠されたシロモノをパっととってみせると、中にはみたこともない果物の盛り合わせまで用意されている。さすが高級。まいった。

 高級ついでに夕食はステキなレストランに行く事にした。本で目をつけていた「ベベ・ブンギル」という店だ。店の名前は、アヒルがどうのという意味らしく、開店当時あれこれ店の名前を考えていたとき、アヒルが突如やってきた事に由来するらしい。
 レストランまではホテルの車で移動する。この車がまた綺麗で広くてエアコンがきていて快適なのだ。やっぱり多少高くてもいいホテルに泊まった方がかしこいかもしれない。
 ベベ・ブンギルでは、ウェイトレスのおすすめでスペアリブなど注文した。あの離島の食事の感動ほどではないが、なるほどなかなかうまい。そしてなかなか安い。デザートにケーキまで食べてエンゲル係数の高い、なかなかハイグレードな夕食であった。

 帰りにぶらぶらと買物をしながら、プリサラスワティの姉さんの言葉を思い出した。
「イマ、10ネンニ イッカイノ スバラシイオマツリ ヤテマス。ゼヒドウゾ」
今日はこれからなにも予定していないし、ちょっとのぞいてみようという事になった。

 お祭り会場に近付くと、本当に大きな祭らしく頭に大きなお供えをのせた女性が列をなして歩いている。観光客風も多いけれど、地元の人がそれをうわまわるようだ。観光客用のニセ祭りでないことが伺い知れる。

 やがて会場である神社にやってくる。とっぷりと日が暮れて雰囲気も出てきた。
 入口では少年がサテという焼き鳥を売っていた。ぼんやりした顔をして、ゆっくりウチワであおいでみせている。
 ゆるい坂を人込みに混ざってのぼっていくと、途中に実行委員会らしき小さなテントがあって、突如そこの兄さんにぐいと手をひっぱられた。
 兄さんは流暢な日本語で、
「サロンハモッテイマスカ?」
などと言ってくる。つまり神聖な祭りなので、それなりの格好をしていないと入場できないという事らしい。我々が何も用意していないとわかると、ササっと腰巻きとはちまきを取り出して、あれよあれよというまに貸し衣裳(無料)を着せられてしまった。
 話してみるとその兄さんはとても人あたりの良い人だった。仕事で数年日本に住んでいた事もあるという。親切に一緒に席まで案内してくれた。
 席というのは、半野外に設置された舞台をを見るためのパイプ椅子の事。お客さんは300人くらいはいたんだろうか、かなりのにぎわいだ。

 このステージでは一晩中色々な出し物が展開するわけだが、この旅の中で1、2をあらそう強烈な印象を残すものであった。

いったい何がくりひろげられたのか、それは次回のお楽しみとしよう。


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